三根一仁 SenSprout代表取締役

 センサーで「野菜生産」効率良く

2018年12月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

  • はてなブックマークに追加
三根一仁氏

三根一仁氏(みね かずひと)

SenSprout代表取締役

1977年生まれ。41歳。2002年東大法学部を卒業し、ソニーに入りビデオ事業の経営管理業務に携わる。06年に退社しベンチャー・インキュベーションを立ち上げ、15年にSenSproutを設立。

――どんな仕組みですか。

三根 土壌水分センサーと灌水制御装置とビニールハウスをセットにした農業ソリューションシステムの販売を今年から始めました。土に挿す定規型のセンサーで土中の2カ所、例えば葉物野菜だと10㎝と20㎝の深さのところの水分量と地表面の温度を測り、通信でリアルタイムにデータを上げます。その数値を見て遠隔操作で水遣りをします。農家さんはそれぞれのハウスを回って土を握ったり、何日に1回という参考書に従ったりして水遣りしていると思いますが、この装置だとそれぞれのハウスに行かずに最適な水遣りができるようになります。

――農業のIoT化ですね。

三根 イタリアンサラダに使うベビーリーフ栽培の第一人者である熊本県の果実堂さんと事業提携をして、まず果実堂さんのハウスの状況をこのセンサーで「見える化」しました。果実堂さんとしてはハウスを今後増やしていく際、新しいハウスでもこれまでと同じ収量を取れるようにされたいわけですが、人も場所も変わるのでなかなか取れない。それを早く取れるようにしようと水分量を数値化しました。値を取ったら、それで灌水をやりたいという話が出てきたので昨夏、手動での遠隔灌水ができるようにしました。収量の安定化と省力化で生産効率が上がりました。

――システムの売り先は。

三根 我々の商品にご関心があるのは農家さんではなく、農業への参入を検討している大企業です。同時にコンサルテーションをお願いされることも多いです。企業の方には、最初は果実堂さんの隣にハウスを建てて、栽培も一部果実堂さんに委託し、そこに一人くっつけて半年間ぐらい研修するというプランをお勧めしています。

――どうして農業に目を。

三根 農業生産人口は2016年が180万人で、毎年15万人ずつ減っています。一方、農作物の需要は変わりません。輸入に頼るという方法もありますが、安全・安心を考えると法人の農業参入はたくさん出てくるはずです。我々としては農業へ参入する企業がしっかり生産効率を上げられる仕組みを作っていくのが一番かなと考えました。

――次の一手は。

三根 来春には自動灌水できるようにしようと考えています。今取り組んでいるベビーリーフは葉物の集合体なので葉物野菜はだいたいやれる自信があります。オランダはトマトや花などの養液栽培でデータ活用がものすごく進んでいます。日本で主流の土耕型ビニールハウスでの農作物の栽培を、同じようにデータを使って生産効率を上げ、儲かる仕組みにすることが我々のプロジェクトの目的です。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

  • はてなブックマークに追加