病める世相の心療内科㉔「荒海とヨット」のエクスタシー

2019年1月号 LIFE [病める世相の心療内科㉔]

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グアム島から7人のベテランセイラーとヨットに乗り、2週間かけて日本まで2400キロの船旅をしたことがある。グアムの天気は晴朗なれど波高しで風もほどよくあり、出航直後は快適なクルージングであった。しかし、私は乗って半日もしないうちに、船酔いでキャビンに転がっていた。ヨットは動力船より安全な乗り物だが、乗り心地は良いとは言えない。とくに船酔いは難敵である。体中の力が抜け、動けなくなり、胃液も吐き出したくなる。キャビンを汚せないので、やっとの思いでデッキに這い上がり、海に頭を突き出しゲロゲロやる。早く船から降りたいが、一度乗ったら、とにかく陸につくまでは降りることができない。この降りられないという感覚は格別である。冷静に考えると、別に船に乗らずとも、私たちは自分の属する会社や家庭という船から降りられず、逃げ出すことができない。こういった逃げられない ………

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