「風蕭蕭」

検察とのタイアップが誤まり

2019年10月号 連載 [編集後記]

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西川廣人 前日産自動車代表執行役員兼CEO

「私としては出来るだけ早い段階で宿題もある程度けじめをつけて、次に引き継ぎたいなという気持ちがずっとございました。(中略)ただし、6月末の総会で信任をいただいておりますので、宿題についてまったくそれを考慮しないで辞めるわけにはいかない。そういう意味では、一番早い方の一つの節目であったろうなと思います」

(西川廣人(さいかわひろと)・日産自動車代表取締役社長兼CEO、9月9日、日産グローバル本社での辞任記者会見で)

カルロス・ゴーン前会長を追い出した西川氏が自らも辞任しなければならなくなった。本人は続投する気満々だったが、さすがに取締役や社外取締役は彼の勘違いを許さなかった。

西川氏をめぐっては、ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)という株価連動型の役員報酬制度で、本来もらえるはずの額より4700万円も多い額を受け取っていたことが、ゴーン氏とともに逮捕・起訴されたグレッグ・ケリー氏の月刊『文藝春秋』への暴露で判明していた。

西川氏はケリー氏に権利行使日の変更を依頼していないと説明しているが、社内調査によれば、個別の依頼や指示の有無はともかく、報酬を増額するようケリー氏に要請した事実があったということなので、即辞任は当然だ。

日産は、よほどの人物を社長に就け、ガバナンスを再構築しないと、今後、自動車業界を取り巻く激流を乗り切れないだろう。

ところで、西川氏は何を間違えたのだろうか。それはゴーン氏の追い出し方だ。東京地検特捜部という公権力を使ったのが誤りだった。株主や取締役、従業員、顧客の見識や知恵、勇気を信じ、自らの首と引き換えに、自社のガバナンスで処理していれば、会社の機能は正常に保たれ、後継者もすぐに決まり次に向かって漕ぎ出せたのに、そうできなかった。

   

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