公明党幹事長 斉藤 鉄夫氏

今こそ「防災・減災」を政治の真ん中に!

2019年12月号 POLITICS [キーマンに聞く!]

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斉藤 鉄夫氏

斉藤 鉄夫氏(さいとう てつお)

公明党幹事長

1952年島根県出身(67歳)。76年東京工業大・院修了。清水建設入社。工学博士。米プリンストン大客員研究員を経て93年衆院初当選(当選9回)。環境相、党政務調査会長などを歴任し、昨年9月より現職。

――相次ぐ台風災害からの復旧・復興に向け19ジャンル75項目の政策提言を出しました。

斉藤 発災直後から公明党の地方議員と国会議員が被災地を駆け回り、現地の要望と課題を精力的に調査した緊急対策です。 ――世界一災害に強い「防災大国」の構築を唱えていますね。

斉藤 我が党の新人議員は、災害が発生したら、真っ先に現地に駆けつけ、小さな声に耳を傾け、被災者に寄り添うことを叩き込まれ、それがアイデンティティになっています。私自身、83年の島根県豪雨に伴う山崩れで実家を潰された経験があり、昨年7月の西日本豪雨災害の対策本部長を務めた時には、半年近く奔走しました。今夏の参院選で我が党は「防災・減災・復興」を「政治の主流」に位置付け、防災意識を高める教育を含め「社会の主流」に押し上げることを公約に掲げました。

55年前の結党当時、「大衆福祉の公明党」を標榜した我が党は、既成政党から「福祉なんて政治ではない」と冷笑されましたが、今では誰もが「福祉の実現こそが政治の目的」と考えるようになりました。防災・減災対策を、政治の真ん中に押し上げるという選挙公約は、時代の先取りをしていたと思います。

――想定外の災害が相次ぎ、「百年に一度」という常套句はもはや無意味になりました。

斉藤 大気中の二酸化炭素濃度は太古の200ppmから400ppm以上に増え続けています。仮に各国が現在の温室効果ガス削減目標を達成しても、産業革命以降の気温は21世紀末に3度も上昇します。パリ協定の努力目標の「1.5度未満」は、地球環境の「ポイントオブノーリターン」というのが定説なのに、地球の危機から目を背ける自国第一主義が罷り通っています。我々はもっと「災害列島」の現実を直視しなければ。

防災の基本は、行政による「公助」、地域住民らで助け合う「共助」、そして自らの身を守る「自助」ですが、行政主導のハード・ソフト対策には限界があります。220人余が犠牲になった昨年の西日本豪雨では、最大860万人に避難勧告が出ましたが、実際に避難所に移動した人は1%未満でした。公明党は、堤防の強化や中小河川の水位計の整備など豪雨対策の推進と同時に、個人の避難行動を決めておく*マイ・タイムラインやハザードマップ(災害予測地図)の普及にいち早く取り組んできました。「お上頼り」人任せの災害対応はもはや通用しません。大災害時代を生き抜く鍵は「自助」と住民同士の「共助」の精神が地域文化として根付いているかにかかっていると思います。

――首都圏大震災も心配です。

斉藤 政府の地震調査委員会は、今後30年以内に70%の確率で起きると予想しており、「首都圏直下地震」への備えが急務です。最悪の場合、死者2万3千人、けが人12万3千人、経済被害95兆円に達すると想定する一方、建物を耐震化して火災対策を徹底すれば死者を10分の1に減らせる可能性があります。しかし、明日にも発災するかもしれません。その時、ご自身とご家族は「いつ」「誰が」「何をするか」。いざという時に慌てず、安全な避難行動をとれるよう、平時の備えが命を守ります。

(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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