ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞。世界が黒澤明ではないもう一人のクロサワを認めた。
2021年1月号 LIFE
黒沢清監督の新作映画「スパイの妻」がヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞したことは、歴史的ヒットとなっているアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」と並び2020年の日本映画界にもたらされた大ニュースだった。ようやく世界が黒澤明ではないもう一人のクロサワを認めた。18年「万引き家族」でカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受けた是枝裕和監督と比べると爆発的なヒット作のない黒沢は世間的な知名度は劣る。ただ、映画に対する知識の深さ、それを裏付ける画の強度、そして狂った社会と自己の不確かさというモチーフをホラーやSFなどのジャンルに落とし込む技量は頭抜けている。
映画を観る上での一つのテーゼは、デビュー作や初期作に監督の描きたいテーマがすべて詰まっていることだ。黒沢は立教大学で映画評論家の蓮實重彦氏の薫陶を受け映画に開眼。長谷川和彦 ………
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