2021年3月号 連載
仕事柄、金融モノの記事を時々、拾い読みするくらいの読者ですが、いつも深みのある記事に驚かされます。およそ雑誌メディアに求められるのは、精度の高い情報は当然として、加えて何といっても読む面白さにあります。面白いというと誤解を招きそうですが、読者は別に企業不祥事・事故調査委員会の報告書を読みたいわけではないと思います。それは新聞メディアの領域でしょう。深みとは人間模様です。事実は登場人物の挙措によって彩られます。ファクタはそれを常に活写しています。
先日、孫のために講談えほん「雷電為右衛門 初土俵」を求めました。こども向けとはいえ大人にも面白いのです。監修者は大人気の講談師、神田伯山。講談調のアクション満載の人物表現が読ませるのです。雑誌にも人物描写の癖があります。私は、どちらかというと週刊文春よりも週刊新潮の癖のほうが好きですが、ファクタはややアクが強い感じです。編集者の筆力もさりながら、権力との距離感の違いが透けているようで。
「フューチャー フィナンシャル コンサルタンツ」常務取締役 桑原稔