丸紅社長 柿木真澄氏に聞く!(聞き手/編集長 宮嶋巌)

「人財活用」に徹すれば「男女同数」になる

2021年4月号 BUSINESS [トップに聞く!]

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1957年鹿児島県生まれ。80年東大法卒。丸紅入社。電力部門の経験が長く、同部門を商社業界トップに押し上げた。丸紅米国会社の社長などを歴任。19年4月から現職。

――新卒採用(総合職)の女性比率を3年以内に40~50%に引き上げると宣言しました。

柿木 当社の総合職約3300人のうち女性は約1割、女性管理職は6%に過ぎません。今の女性の採用比率(2~3割)を続けると、20年後も男性が8割を占め、殆ど変わりません。世の中の半分は女性だというのに、いつまでたっても男性目線では、社会の価値観の変化やマーケットの課題に追いつけない。一方、我が国の人口は年々減り続け、やがて人手不足が顕在化します。女性の活躍推進は、いま取り組むべき課題なのです。

――事実上の「クオータ(割り当て)制」の導入ですね。

柿木 商社には「典型的な男社会」のイメージがあり、「女性の採用は2割まで」といったアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を持たれているから、これまで女性の応募自体が3割に満たず、少なかった。「半数近く女性を採ります」と宣言したことで、当社の本気度が伝わり、たくさんの女性がエントリーしてくれたら嬉しいですね。

――年頭挨拶で表明したのは。

柿木 実は年末に女性の人事課長から一歩進んだ人財活用として「数値目標の公表」の提案があり、我が意を得たりと思い即決しました。年頭挨拶で表明したのは、環境変化に柔軟に対応していくには、同質的な集団からの脱却が必要不可欠だと訴えたかったからです。社内外には女性は海外駐在や頻繁な出張ができないといった無意識の認識があり、異論が出ることは覚悟していました。最も多かったのは、そもそも優秀な新卒を一人でも多く採用する目的が、女性採用拡大にすり替わっているという批判です。しかし、この「そもそも論」こそが、女性の活躍を妨げている一番の問題ではないかと、私は思います。

――どこが問題ですか。

柿木 女性のライフイベントが強調されますが、どうしても職場を離れなければならないのは出産前後の期間ではないですか。実際、欧米駐在時代に接したキャリアウーマンは堂々と休暇を取り、同じポストに復帰していました。夫婦が家事と育児にかける時間の割合は、日本の女性は男性の6倍に対し、アメリカやドイツ、フランスでは女性が男性の2倍程度だそうです。私は出社前に洗濯やお風呂掃除などを手伝っていますが、それだけでもたいへん(笑)。男性が家事や育児を押し付けるから、女性は働きたくても働けない。

――日本は遅れている?

柿木 遅れていると言うより、実にもったいない。世の中は男女半々、優劣はありません。現在の当社の職場環境は10人に1人しか女性がいませんからマイノリティの大変さを感じる場面があると思います。一般に女性が3割を超えると、男性にとっても女性の仲間が当たり前になるそうです。当社は今、女性の採用だけでなく、多様な人財が実力本位で登用され、活躍できる組織作りにも力を注いでいます。「男社会」の中で埋もれていた女性の伸び代は大きく、日本の突破口は女性の活躍抜きには考えられない。「人財活用」に徹すると「男女同数」になると、私は考えています。新卒採用の数値目標を掲げる会社が増えて欲しいと思います。

(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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