2022年11月号 連載
「たった一人の高校生のために、赤字ローカル線を維持する日本」の豊かさを日本人は知らない。
私は日本人だが、幼少期から米国、ニュージーランド、英国で生活し、スロバキアで欧州医師となった。
ニュージーランドでは、牧場経営をするホームステイファミリーの車、同級生の家族の車、スクールバスを乗り継ぎ、片道二時間かけて高校に通った。これは特別なことではなく、同様な方法で通学する学生が多数いた。家族のサポートを得て教育を受けられる家庭は、現地で「富裕層」に分類される。学校に通えない過疎地域や貧困層の人々に対する自治体のメッセージは一貫している。「自力でどうにかすること」だ。誰も助けてはくれない。
9月号の「廃止10年がかり『赤字ローカル線』」で、利用者のいない鉄路廃止を巡った地元選挙や利権問題が紹介されていた。実態はどうであれ、他国の厳しい環境で、日本の赤字ローカル線は光り輝き「日本の驚愕的な豊かさと信頼感」を印象付けている。
医療ガバナンス研究所 妹尾優希