東京で桜の季節が終わる4月中旬。新型コロナウイルスが猛威を振るう前までは、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊氏が設立した奨学財団、「伊藤謝恩育英財団」のパーティーが同氏の私財を基に建てられた東大本郷キャンパスにある伊藤国際学術研究センターで開催されていた。新しく奨学金を受け取る国内外の優秀な学生の紹介や奨学金によって学問を無事に修めて社会や学究の世界に羽ばたいていったOB、OGも参集。会場は若者たちの熱気で包まれた。祝電の中には伊藤氏と親交のあったピーター・ドラッカー氏やフィリップ・コトラー氏といった碩学の名も。そして4月30日に誕生日を迎える伊藤氏を出席者がお祝いする。お土産は伊藤氏が大好物の桜餅。春の香りが口いっぱいに広がることで有名な老舗から取り寄せていた。だが、伊藤氏が3月10日に98歳で逝去したことで同氏を囲む温かみのある会はもう開かれない。