私と読売新聞論説副委員長の尾山宏君が聞き手を務め、北村滋前国家安全保障局長が監修した『安倍晋三　回顧録』（中央公論新社）が発売されて2カ月余りが過ぎた。私たちの予想をはるかに超え、20万部を超える売り上げを見せている。そのこと自体は嬉しい限りだが、私たちは決してベストセラーを目指したわけではない。回顧録をつくろうとしたのは第一に、国論を二分するような政策を掲げながら、なぜ安倍内閣は133年の日本憲政史上最長の内閣になり得たのか、その理由を安倍さん本人に直接語ってもらおうと思ったのである。第二は、首相退任後、時を置かずに回顧録をつくろうとする伝統が乏しい日本の「回顧録文化」ともいうべきものに風穴を開けることができないのだろうかという思いがあったからだ。