摩訶不思議なM資金詐欺の世界を覗き込み、どうにも目眩を覚えるような幕切れだった。3月22日、コロワイドの蔵人金男会長が31億円余りを騙し取られた詐欺事件を巡り、事件当時、「マック・アオイ」を名乗っていた武藤薫被告（68）に対し横浜地裁は実刑8年を命じた。前代未聞の巨額詐欺だけに重い判決は想定の範囲内。が、裁判所が最終的に認定した事件の構図は意外なものだった。捜査時、武藤被告が話す巨額資金話を信じ込み指示に従っただけと供述し不起訴処分となっていた人物について、裁判所は共謀関係にあったと認定したのである。単独犯として始まった公判だが、複数犯と結論づけたのだ。じつは、詐欺があった2017年夏～18年暮れ、蔵人氏は一度も武藤被告と会ったことがなかった。接触を重ねていたのは「先生」と呼ばれる禿頭の老人（82）と、その先生が「事務屋」で使っていた「アジア経済協力会 ………