肩書コレクターのごとく、複数の賞の選考を掛け持ちする大作家らの害毒。
2023年9月号 LIFE
7月、また新たな芥川賞と直木賞の受賞者が決まった。最も有名な文学賞であることは間違いないが「誰が取ったか知っていますか」と聞かれて答えられる人は一握りの文学ファンだけだろう。綿谷りさが『蹴りたい背中』で史上最年少の19歳で芥川賞を受けたのは約20年前。金原ひとみ(当時20歳)の『蛇にピアス』との同時受賞で社会現象となったが、以後で記憶に残る受賞作はあるだろうか。賞の注目が低下した要因はいくつかあるが、選考側にもあるのは見逃せない。一人の作家が複数の賞の選考を掛け持ちする問題だ。純文学の新人に与えられる芥川賞の選考委員は日本を代表する作家9人。例を挙げれば枚挙に暇が無いが、最も罪深い事例を示そう。奥泉光はすばる文学賞、小川洋子は野間文芸新人賞、島田雅彦は群像新人文学賞と、同じ新人を対象とした賞の選考を兼ねている。大衆文学を対象とする直木賞も選考委 ………
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