連載 病める世相の心療内科

煩わしい人間関係こそ家族の絆

2023年10月号 LIFE [病める世相の心療内科(81)]

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日本の家族の形、あるいは絆といったものが変質してきている。家族の成員同士の情緒的交流が乏しくなったと思わされる事例がとみに増えているのだ。真の情緒的交流とは、相互に相手を慈しむ共感的なものである。その共感力が家庭内で育まれにくくなっている。原因は、家庭を取り巻く社会との交流が、核家族化やコミュニティの消失で希薄化していることが大きそうだ。少人数で、外部との交流もなく暮らす家庭では、密室的な環境で相互の反発力が際立ってゆく。慈しみあう共感力は培われにくく、家庭崩壊に繋がると私は考えている。狭い環境で複数の動物を飼育すると弱い個体の順に失調しやすいと書いたことがあるが、人間も例外ではない。仕事を辞めて家にいる夫にストレスをためた妻がクリニックに来ることは珍しくない。ある初老の主婦は、夫が彼女の衣類にこっそり綻びを作る妙ないたずらをする、様子 ………

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