2024年7月号 LIFE
水俣市の吉井正澄元市長(92歳)は、半世紀以上に渡る水俣病の問題について、高い視野から透徹した視点を持てた人だった。昨年春、ちょうど桜が咲き始めたころ、水俣市の街なかから20キロほど山あいに入ったご自宅でお目にかかったのが、私にとって最初で最後のインタビューとなった。すでに癌があちこちに転移した後で、名刺を差し出すと、「余命あと2年と言われたんですが、もう2年経ってしまい、いまは賞味期限切れです」とあいさつされた。野菜を作り蕎麦や大豆を植えながら、いつもパソコンに向かって文章をつづっているといい、いくつかの小文を頂戴した。水俣市議を5期務めた地元自民党の重鎮だったが、激しい闘争や保革対決の余燼がくすぶるにもかかわらず、急進的な闘争を続けてきた川本輝夫さんたちに水俣病問題の教えを乞うた。自民党からは「除名する」と脅されたらしいが、そうした保革の ………
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