連載/病める世相の心療内科/風を愛でる我が家にエアコンなし/遠山高史・精神科医

2024年9月号 LIFE [病める世相の心療内科]

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わが日本においては、俳人の松尾芭蕉、詩人の立原道造など、初夏から夏にかけての自然の変化に人の営みを重ねて、多くの作家が作品を作っている。少し暑さが気になりだしたころ、ふいに吹く初夏(はつなつ)の風の心地よさを、今時の子供たちは感じたことがあるだろうか。その心地よさを人に届けたいと、版画家で詩人の川上澄生(1895―1972)は、恋人を包むように吹く、「はつなつのかぜになりたや」と歌う。好きな詩の一つである。ところで、初夏とは5月中頃から6月中頃を言うとされているが、この頃、すでに日本では真夏の風が吹くようになっている。この7月に至っては、例年より2度半も高い熱風が吹き、風に吹かれるどころではなくなっている。テレビではしきりとクーラーを使え、やたらに外に出るな、と5月頃から気象予報士が叫んでいる。私には自然から逃げろ、子供らは引きこもりゲームをやれ、年 ………

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