連載/病める世相の心療内科/苛立ちを助長する「離散的社会」/遠山高史・精神科医

2025年5月号 LIFE [病める世相の心療内科]

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社会問題の大半は、離散的視覚情報社会のせいである。少子化もその一つであることは、群れて生きる動物と孤立系動物の個体数や、繁殖の仕方から、説明がつく。厳しい自然の中では、群れて生きるほうが孤立するより有利である。群れて日々、肌を触れ合い、互いに匂いを確かめ合う関係の方が、生殖意欲を高めることは動物行動学的に当然である。視覚だけで世界を見ている生物は、人間以外にあまりいない。人間の離散的生活を加速させたのは、化石燃料由来の膨大な電力消費とインターネットである。視覚情報は時空を無視して届けられ、便利ではあるがフェイクが簡単に作れてしまう。加えて深刻なのは、人々をネットに依存させ、個々の関係を離散的にさせてゆくことにある。群れの中では相互の共感力が必要で、個を抑制し、我慢することが生きるスタイルになる。離散的になれば、個人の勝手な動きが可能にな ………

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