コラム:某月風紋

2025年8月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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鹿児島県のトカラ列島近海で地震が続き、SNS等で“予言”との関連がささやかれた。気象庁は「現在の科学的知見では、日時・場所・規模を特定した地震予知は困難」と否定したが、香港や台湾からの訪日客が減少。一部の航空会社が減便するなど影響は広がった。

たつき諒さんのマンガ『私が見た未来 完全版』で、「本当の大災難は2025年7月にやってくる」と書かれていたことによる。99年に出版した本の表紙に「大災害は2011年3月」と記され、東日本大震災を言い当てたことで注目されていた。今回は何もなかったとしても、南海トラフ地震や首都直下地震はいずれくる。多額の復興費用がかかるのだから、平時には財政を健全化させておく必要がある。

だが、参院選で各党は消費税減税や給付金の支給などバラマキを競った。国債の増発を避けるとした政党は多かったものの、世界最悪レベルの財政状態を考えれば、せっかく上振れた税収で国債の発行抑制や償還に回すべきではなかったか。大阪経済大学の小野善康特命教授は「給付金や補助金は、消費にも景気にも一切影響を与えない」と述べている。成熟した経済では、お金を渡すだけでは新たな需要を生み出さないからだという。

物価高対策として、生活に困っている低所得者や貧困家庭を支援する施策は必要だろう。だが、住民税の非課税世帯にカネを配る従来の方式は問題が多い。非正規雇用のシングルマザーなどが除かれ、収入はなくても多額の資産を持つ高齢者が含まれてしまう。

石破首相は2040年に名目GDPを千兆円にすると言っている。24年が609.5兆円だったから64%増える計算。ハードルは高そうだが、年率に直すと3.1%強。22~24年度の3年間の物価上昇率が平均3.1%だったので、この物価上昇が続けば実質GDPは横ばいでも達成できてしまう。

(ガルテナー)

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