みんなの理解が支えに/ファンケル「メノポーズアクション」

年齢とともに生じる健康と美の課題に取り組むファンケルが、女性の不安に寄り添う啓発活動をスタート。

2025年9月号 INFORMATION

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更年期の悩みを抱える母親と子供達の向き合い方を描いたウェブ動画のトップ画像

50歳前後の女性が迎える「更年期」。卵巣機能の低下から、女性ホルモンが減少し、さまざまな不調が現れ、不安を抱える人は多い。女性特有の健康課題でもあるメノポーズ(更年期)は、就業の継続や業務の効率化にも大きな影響を与えており、経済産業省の試算によると、約1.9兆円の経済損失に上るという。

「メノポーズアクション」特設サイト

化粧品や健康食品を手がけるファンケル(神奈川県横浜市)が40、50代の女性に実施した調査でも、日常生活に支障を感じている人は約8割に及ぶ。具体的に辛いと感じていることについては「いつまで続くのか不安を感じる」「体だけでなく、心の不調もあることが理解されにくい」「今までできた事ができなくなった」という回答が多くを占める。

調査では、家族や友人などとのコミュニケーションの難しさも浮き彫りとなった。支障を感じる人の約9割が身近な人に相談したいと回答した一方、6割以上の人が周囲に話すことに抵抗を感じているという結果が出た。理由として「症状の理解を得にくい」「経験した人でないと理解できない」「言われても困るのではないか」「年をとったと思われなくない」といった声が挙がった。それに対し、同居する家族の調査では、妻や母親の更年期について話すことに抵抗を感じている人は約3割と少なく、両者で理解や意識に差があることが判明した。

ウェブ動画で、親子の向き合いを表現

ファンケルコーポレートブランド推進グループの椎名由起さん

こうした課題を解消するため、ファンケルは世界メノポーズデーの昨年10月18日に合わせて「ファンケル メノポーズ アクション」を始動させた。「更年期をひとりにしない。みんなの理解が支えになる」を合言葉に、更年期世代の悩みに寄り添う啓発活動を展開し、まだプロジェクトの1年目にもかかわらず、大きな話題を呼んでいる。広告戦略部コーポレートブランド推進グループ係長の椎名由起さんは「まずは周囲に話せる環境づくりを重視し、理解を促進する活動に力を入れている」と説明する。

ユニークなのは、従業員や顧客、あるいは更年期世代にとどまらず、広く一般に開かれた活動であるところだ。特設サイトでメノポーズに関する情報を積極的に発信。昨年に配信したウェブ動画では更年期に悩む4組の母親と子供が登場。母親が更年期の悩みを打ち明け、その姿を初めて見た子供が真摯に向き合い、寄り添うシーンなどがドキュメンタリータッチで描かれている。椎名さんは「演じてもらうと作られた感じがするため、オーディションで、素で話してもらった映像を入れ込んだ」と制作の舞台裏を明かす。動画の反響は大きく、サイト開設から半年で1千件以上のコメントが来ており、「1人で悩んでいたけど、話してもいいんだという声が多く、Xにも投稿が広がっている」(椎名さん)。

学生向け講座で、アイデアを考案

産業能率大学で実施した更年期へ理解を深める特別講義

このほか、講座やイベントを通じた啓発活動にも力を入れており、これまで対面で計12回開催し、約1600人が参加している。高校・大学などの学生向けの講座では、ファンケル社員が講師となり、更年期の課題を説明し、同社の取り組みを紹介。更年期世代の人が周囲に気軽に相談できる環境を作るためのアイデアを、参加者に考えてもらう企画なども行っている。椎名さんは「最初は学生に馴染みのないテーマで、興味を持ってもらえるか不安だったが、自分のお母さんと重ねて考え、何か行動しようとする学生が多い」と手ごたえをのぞかせる。

更年期の不安を抱える当事者を対象としたセミナーも開催。更年期に詳しい産婦人科医の高尾美穂さんが講師を務める特別講座には多数の応募があり、「更年期の健やかな過ごし方」について、抽選に当選した来場者が熱心に耳を傾けていたという。

ファンケルは全従業員の約8割が女性で、特設サイトには社員の体験談も掲載。色々なテーマに合わせて、更年期の悩みや体験を分かち合えるエピソードをサイトで募集し、それらの声も公開している。

ファンケルには「正義感を持って、世の中の『不』を解消しよう」という創業理念がある。2030年に向けた3つの重点テーマを掲げ、その1つに「健やかな暮らし」の実現がある。年齢とともに生じる健康と美の課題、女性特有の健康課題の解消に取り組んでおり、「メノポーズ アクション」も、その一環という。

ファンケルでは、かねてより従業員が女性の健康に関する理解を深めるための研修を実施。また昨年より「女性の健康検定」の取得を推進してきた。昨年12月時点で、実に264人が合格。今年3月には女性の健康とメノポーズ協会が主催する「女性の健康経営アワード」で「推進賞」を受賞する快挙を遂げた。

今年も「世界メノポーズデー」の10月18日に向けて、さまざまな企画を計画する。女性が一番相談したいのが夫やパートナーという調査結果があり、今年は男性向けのコミュニケーションに重点を置いた企画や、働く女性へのサポート、自治体との連携をテーマにした企画の準備も進めている。

(取材・構成/編集部)

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