連載/病める世相の心療内科/ルールに情が打ち勝つ「子争い」/遠山高史・精神科医

2026年2月号 LIFE [病める世相の心療内科]

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「子争い」という大岡裁きが好きである。自分こそこの子の母親だと言い張る二人の女に、小さな子の腕を綱引きのように左右に引かせ、引き勝ったほうを実母とするというルールを決めて争わせる。しかし、大岡越前は引き負けたほう、すなわち子が痛みで泣くのに耐えきれず手を離した女を、勝者としてしまう。越前は、ルールを破り、子供の痛みへの情緒的共感力の多寡で親を決めた。この話、ソロモンの伝説や中国の棠陰比事という古典が元となっているというが、いずれにせよ、ルールが情に屈服する真理を突いている。私が好きなもう一つは歌舞伎の「勧進帳」である。逃亡者の義経は安宅の関所を通れない。そこで弁慶は必死の演技で義経を打ち据える。その情に代官富樫左衛門は共感し、義経と知りつつも通してしまう。これもまた、ルールに情が打ち勝つ物語である。講談によくあるが、話がルールと情の絡み ………

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