号外速報(3月9日 20:40)
2026年3月号
POLITICS
[号外速報]
by
伊藤博敏
(ジャーナリスト)

7時間半の長丁場ながら熱が冷めることがなかった参政党フェス「協奏」(写真/宮嶋巌)
会場を埋め尽くした党員・サポーター約2000人の熱気は、創生神楽、国歌斉唱から始まって、2つの講演やお笑いを挟んで、最後に神谷宗幣代表が飛び入りで熱唱したエンディングライブまで、7時間半の長丁場ながら冷めることがなかった。
形式は国政政党が政治活動費を集める目的で開く政治資金パーティーである。業界団体や後援会が2万円のパーティー券を義理で買い、動員された社員や後援者が政治家の挨拶を聞き、乾杯の音頭でグラスを空け、列席者の話を聞いて1~2時間で引き上げるというのが政界で繰り返された光景だった。
しかし参政党が3月7日(土)、東京・高田馬場で開いたのは文字通り、政治家と党員らが交流するパーティーであり、内閣府参与などを務めた原氏が「公益資本主義」を、経済学者でベストセラー『円の支配者』を著したリチャード・A・ヴェルナー氏が「失われた30年からの脱却」を提唱する講演会であり、プロ顔負けの芸達者が参加する「お笑いグランプリ」や参政党のテーマソング『おはよう』を作詞作曲した高木芳基氏の熱唱などを楽しむイベントでもあった。
まさに参政党フェスティバルであり、今年はSANSEITO FEST2026「協奏」と名付けられた。

最前列の「SS席20万円」から受付終了!
5年前に結党し、22年7月の参院選で神谷氏が当選して国政政党となり、昨年の参院選では14名が当選して躍進、今年2月の衆院選で比例票数を大きく減らしたものの、高市早苗人気で自民党が大勝するなか15議席を確保して踏みとどまった。
衆参合わせて30議席――。
政権にはまだ遠いが、神谷氏がひとりで立ち上げた政党であることを思えば十分に評価できる。
それにしても立党の頃はコロナ禍と重なり「反ワクチン」で人気を集めた反面、「反グローバリズム」の姿勢を「謀略史観の政党」として警戒され、躍進の参院選は「外国人対策」を訴え「日本人ファースト」というキャッチコピーで戦ったものの、それが「排外主義」だとして街宣活動では、旧シバキ隊などから反対のプラカードを掲げられ、「差別はやめろ!」と大声で威嚇された。
保守化する世界政治の流れに乗っているとはいえ、国民の参政党に対する「好き嫌い」はハッキリ分かれる。
それは参政党が、「反グローバリズム」を認めるか否かの二者択一を国民(有権者)に迫っているからで、それを「押しつけ」と嫌う人は少なくない。旧シバキ隊などの過剰な拒否反応もそこから生まれる。
ただ仲間になれば政治に参加するプラットフォームを与えられ、熱心な活動を認められて候補者に推薦されると、普通の3人の子の母親で看護師だった吉川りな氏が、衆院選2回の当選で副代表に就任して国会に立ち、舌鋒鋭い質問で脚光を浴びるなどジャパニーズドリームを体現できる。
「協奏」は参政党躍進の理由を理解できる場だった。
党員・サポーターにとってはまず、党と候補者を「推し活」する場である。SS席20万円、S席10万円、A席5万円、一般席2万円で高い席から売れていく。
SS席の特典はボードメンバーとの記念撮影会、神谷代表との握手+サイン会などである。会場では寄付をつのるコーナーがあり、参政党カラーのTシャツ、ポロシャツ、ウインドブレーカー、神谷代表のキーホルダー、ボードメンバーシール、トートバックなどが売られていて休憩時間は長蛇の列だった。

かぶり物をした国会議員との記念撮影。中央のドラエもんは松田学代表代理(写真/宮嶋巌)
また国会議員だけでなく、都議、県議、市議などフェスに参加した議員にとっては、選挙戦でのポスター張り、チラシ配り、街宣活動の手助けなどはもちろん、タウンミーティングやワークショップなど日常の議員活動をボランティアで支える党員・サポーターに対する「お礼の場」でもある。
全国の党員から勝ち抜いた5組が登場した「お笑いグランプリ」では、党幹事長の安藤裕氏が地元京都の女性幹部とコンビを組み「アンディ&ダイナ」として率先登場。消費税を題材に笑いを取った。
また党幹部をいじる「身内ネタ」などで勝負する市議コンビもいて大いに会場を沸かせた。さらに国会議員ブースでは休憩時間に写真撮影やサインなどで、かぶり物をした議員が交流に努めていた。
隠しようがないのは参政党が神谷氏の党であることだ。
全国289小選挙区のすべてに支部を置き、候補者の選定や支部運営は県連や支部幹部に任せる体制を敷き、それが「参政党」たるゆえんだが、党の方針はもちろん資金面も含めた党運営、最終的な候補者選定などはすべて事務局長でもある神谷氏に委ねられている。
要は神谷氏に「賛成」する党でもある。その「神谷教」といって差し支えない独裁は、「衆参国会議員1分間スピーチ」などにも表れており、「参政党で何を成し遂げたいか」という問いかけに、「(神谷氏と)吹田市議時代の同期。神谷代表を支えるのが使命」(石川勝氏)、「参政党を与党にして神谷代表を首相にする」(工藤聖子氏)という議員がいて、なによりスピーチ優勝者の賞品は「神谷代表との食事券」だった。

休憩タイムのグッズ売り場は長蛇の列(写真/宮嶋巌)
神谷氏の理念はこれまでに3回あった国政選挙で明確になった。
世界をグローバリズムに導く多国籍企業への反発は強く、それが国土と国民を大切にする日本人ファーストにつながり、農業改革、教育改革、歴史認識を含む意識改革を訴えた。それは衆院選での公約である「3つの柱と9つの政策」に盛り込まれており、より具体的に国民に訴えたのは「暮らしを豊かにする政策」で、消費税減税、国民負担率35%以下、子供ひとり当たり10万円給付だった。
確かに子育て世代には受けるが、財源をどうするのかを含め、ポピュリズム批判も仕方がない。なにより参政党には経済政策を打ち出す際の基軸がない。
「反グローバリズム」は「党是」というべきものだが、資本と情報と労働力を求めて企業がグローバル展開するのは、成長を第一義とする資本主義の宿命である。
それに逆らうには理念を政策に結び付け、望ましい社会を形成する経済システムが必要だ。その回答として参政党が「躍進」で打ち出したのが「公益資本主義」だった。

「公益資本主義の提唱者」原丈人氏が講演
提唱者の原丈人氏が講演で「公益資本主義」の対極にある「株主第一主義」の例として出したのがアメリカンエアラインだった。
苦境に直面したアメリカンエアラインの経営陣は従業員に対して340億円の給与削減を求め、失職を恐れて従業員がその要求を呑み経営が改善すると、経営陣は200億円を超えるボーナスを得た――。
また経済成長はそれを実現した従業員に富をもたらさなかった。
2010年から21年度にかけて純利益は237%増加した。その結果経営陣は、株主への配当を188%増やし、株価の高騰をもたらす自社株買いを535%増加させたが、従業員報酬はわずか5%上げただけだった――。
原氏が繰り出す実例にフェス参加者は誰もが「怒りの共感」を示した。富を収奪するのが「会社は株主のもの」とする株主第一主義だけに、企業を構成する「社中(株主だけでなく事業を成功に導く従業員、取引先、顧客、地域社会などの仲間にして事業協力者)」への分配を大切にする公益資本主義を受け入れた。
「会社は社会の公器であり利益はみんなのものであることをアメリカ人に教えるべきだ!」
「株主にだけ利益をもたらすコーポレートガバナンスコード(企業統治基準)は直ちに廃止すべきだ!」
こうした原氏の主張に参加者は大きな拍手を送った。

ウェルナー教授の「子どもが生まれたら3000万円を提供する」との提案に盛大な拍手
もうひとりの登壇者であるリチャード・A・ヴェルナー氏は、「12年間、東京にいたものの最近、日本語を使っていないので(つたない言葉を)許してください」と切り出した。確かに流暢ではないものの、ハッキリと意味が伝わる日本語で、本質的な日本の金融政策の歪みを伝えた。
2001年に出版された『円の支配者』は衝撃的なベストセラーだった。
円を支配し日本経済を動かしているのは日本銀行で、1980年代に日銀が過剰な信用創造を行ってバブル経済を演出、その後、突然の金融引き締めでバブルを崩壊させたと指摘した。
経済をコントロールするのは政府より中央銀行にあるというのがヴェルナー氏の認識だが、その中央銀行が間違い続けている。
講演ではワシントン・コンセンサス(国際通貨基金や世界銀行が中心となって発展途上国に押し付けた財政規律、民営化、市場自由化など)を厳しく批判した。
主流派経済学は1世紀以上も進歩していない。その誤りのままのワシントン・コンセンサスを実行させたが成功した国がひとつでもあったか。ありません。結果、起きたのは不平等の拡大であり二極化の進展。日本、韓国、中国の急成長は、ワシントン・コンセンサスと正反対の政策を取ったことで成し遂げられたのです――。
「失われた30年に対する処方箋」として出されたのが、①規制緩和によって小さな銀行を創設して信用創造を進めること、②政府(日銀)がつくる生産的信用創造、③アメリカを助ける円安ドル高の是正、などだった。日銀や市中銀行の信用創造機能を大胆に使うことがヴェルナー氏の提案だったが、②の事例に「子供が生まれたら3000万円を提供する」と提案すると、盛大な拍手が起きて講演で一番の盛り上がりを見せた。
予定を45分も超過し、午後7時半に神谷代表が登壇した。

「みんな一緒に突っ走って行きましょう!」と大音声を上げる神谷代表(写真/宮嶋巌)
ほとんどの参加者は残っており、それが党員・サポーターの満足度を示していた。
神谷氏は30議席になったことに謝辞を述べ、だが、「本質的な問題が残されている。(低成長は)仕組まれているんじゃないか。日本だけ成長していないなんておかしいじゃないか」と訴えた。
発展途上国の成長にブレーキをかける世界経済の背後にあるもの、日本のバブルを演出してつぶした日銀の背後にあるもの――。「謀略論」という指摘を恐れ神谷氏がそこに踏み込むことはなく、ヴェルナー氏もまた主流派経済学という言い方しかしなかったが、多国籍企業や国際金融資本を動かす「背後」の存在を信じているのは確かだろう。
それだけに神谷氏はこう締めくくった。
「(困難な戦いに)みなさんを道づれにした。『道づれ』という歌を作りました(笑)。みなさんとことん行きましょう。10年、20年と長い戦いとなる。みんな一緒に突っ走っていきましょう!」
暑苦しい、といっていいほど熱い人である。その熱量に応える党員・サポーターが集まったフェスだったが、上り調子だった熱量がこれからも持続するかどうか。
それが今後の参政党に問われている。