スクープ/「銀座クリニック」の黒幕/「再生医療」謳う自由診療に札付きの輩

2026年6月号 DEEP

幹細胞治療の効果を謳う銀座クリニック(HPより)

厚生労働省により、その発表がなされたのは今年3月13日のことだ。「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」(東京・銀座)が外国籍の患者に慢性疼痛治療のための再生医療を施したところ容体が急変、救急車内で心肺停止となり、搬送先で死亡が確認されたという。同日付で厚労省は同クリニックに対し医療提供の一時停止を求める緊急命令を出した。

1カ月後、事態は思わぬ広がりを見せる。4月21日になり厚労省が同様の緊急命令を下したのは福岡市の「医療法人社団禮聖会トリニティクリニック福岡」だった。同省が立ち入り検査を行ったところ、本来なら報告が必要な症例事案を3年近くにもわたって隠蔽していたことが明らかになったのだ。当時、同クリニックが再生医療を施した患者のうち5人に発熱など体調不良が見られ、1人は入院を要すほどだったという。

近年、幹細胞投与など再生医療を謳う自由診療が巷には溢れている。冒頭の銀座クリニックが対象とする疾患は変形性膝関節症からうつ病まで12項目。保険適用外のため治療費は高額だ。自閉症の場合、自らの体内から抽出した脂肪をもとに培養した幹細胞3億個を投与する費用は420万円である。じつのところ、運営法人の本拠は三重県だ。理事長の榎並壽男氏は皮膚科医で、かつては白斑治療で知られた。東京進出は2006年頃で、再生医療を手掛け始めたのは12年頃と見られる。

注目すべきは東京、福岡と遠く離れた2つの事案の背後に控える黒幕的な会社の存在だ。京都市に本社を置く「JASC」がそれである。かつての社名は「RNL BIO JAPAN」といい、代表取締役の羅延燦氏はソウル大学獣医科学部卒業とされる韓国人。もともと韓国で行っていた再生医療ビジネスを日本に持ち込み業容拡大を図ってきたらしい。運営する施設で培養した幹細胞を各クリニックに供給しており、むしろ主導的役割だ。

じつは、同社を巡っては16年前にも死亡事故が起きている。京都市南区の自社ビルで「京都ベテスダクリニック」を直営していたところ、70代の韓国人男性患者が投与開始5時間後に死亡したのだ。

この件は広く報道され、同社はそれがきっかけで経営難に陥った。税金の滞納により11年5月から14年5月にかけ京都府と京都市から都合4度にわたって自社ビルが差し押さえを受ける有り様だった。

同社を巡ってはこの頃、気になる事実がある。13年7月、前出の自社ビルに「ダイドー技建」なる会社が支店を登記していたのだ(14年2月抹消)。同社のオーナーは吉富太可士氏という元税理士。有名な病院乗っ取りブローカーで、08年頃には「つくばブレーンズ」という会社を支配下に置いていた。同社は出産時に取り出される臍帯血を将来開発される新治療に使うため長期保管する会社で、やはり再生医療関連だ(結局、09年に破産)。その後、吉富氏は11年に摘発された富士バイオメディックスの粉飾事件で有罪判決を受け、18年には徳友会を巡る詐欺事件で再び逮捕されているが、そうした間にも韓流再生医療に触手を伸ばそうとしていたようだ。

ダイドー技建はその後の14年2月、吉富氏から酒井勝一氏なる人物の手に渡った。その酒井氏も直後に太陽商会を巡る粉飾事件で逮捕。近年は下の名前を「崇臣」と改め、福島の医療法人を支配下に置くなど動きは盛んだ。民事裁判によれば、千葉の医療法人を巡っては2億円超の現金を流出させていたとされる。

再生医療を謳う自由診療の危うさは、これらいわく付きの人物がうろついていることからも明らか。前述した16年前の死亡事故をきっかけに一定の法整備はなされたが、依然、野放し状態に近く、さらなる規制は待ったなしだ。

記事の無断転載・複製を禁じます © ファクタ出版