ウイスキー「角瓶」
2009年6月号 連載 [PRODUCT Review]
銀座コリドー街の一角にある立ち飲みバー。仕事帰りの会社員でごった返す中、女性店員が慣れた手つきでサーバーからハイボールをジョッキに注ぎ、慌ただしく運んで行く。ハイボールとは、ウイスキーを炭酸水で割ったもの。日本で最初に普及したウイスキーの飲み方で、懐かしさを覚える読者も多いだろう。
国内のウイスキー出荷量は10年連続で前年割れ。シェアトップのサントリーも08年は市場同様に前年より2%減った。新たな需要を掘り起こそうと、サントリーが切り札として“復活”させたのがハイボールだ。「角ハイボールタワー」と呼ばれる専用サーバーを主力商品「角瓶」を取り扱う飲食店に無償提供するなど、消費者との接点づくりに力を入れる。ウイスキーに馴染みのない若者や女性にも、手軽で飲みやすいハイボールを知ってもらい事業全体を底上げするのが狙いだ。
すべり出しは順調。テレビCMやネットを使った積極的なマーケティングも功を奏し、角瓶の09年1~3月の売上は前年比で約1割増。取り扱い店舗数も年内目標を前年の2倍の3万店に上方修正するなど、手応えを感じているようだ。広報担当者は「まずは裾野を広げ、いずれ『山崎』など高価格商品の愛飲者に繋げたい。ウイスキー事業を再び成長軌道に乗せたい」と期待する。懐かしのハイボールは酒場の“新たなスタイル”として定着するか。