リクルートが「割引クーポン販売」に参入

2010年8月号 連載 [IT万華鏡]

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米国で開始から2年も経たずに約300億円以上の売り上げを記録した割引クーポン販売サイトの「グルーポン」。米グルーポン社が生み出したこの新しいビジネスモデルを模したサイトが日本で増殖中だ。この3カ月で10社ほどのベンチャー企業が参入し大混戦状態になっている。

グルーポンの仕組みは単純だ。地域ごとに毎日一つの割引クーポンを24時間という制限内で販売するというもので、あらかじめ決められた成立条件人数に購入者数が達した場合にのみ、5割引き以上の割引クーポンを販売する。割引クーポンを入手したい購入者は、成立を目指しツイッターなどで積極的に宣伝するため、クチコミが広がりやすい。

米国でも100を超えるグルーポン型サイトが登場。サービス提供のためのシステムも販売されており、参入障壁が低いことが乱立を招いている。サイトの優劣はいかに優良なサービスを高い割引率で提供できるかにかかる。つまりは店舗に対する営業力。店舗を一つひとつ掘り起こす営業力を持つベンチャー企業はまずない。

そこにリクルートが目をつけた。7月15日、グルーポン型ビジネスへの参入を発表。飲食店などのクーポン情報誌「ホットペッパー」を発行する強みを活かし、店舗への営業力で他を圧倒する腹積もりだ。リクルートの参入でベンチャー企業は一掃される公算が極めて高い。

ただ、リクルートにとって打たざるを得ない手であったことも確か。ホットペッパーに掲載される割引クーポンは広告の一種で、掲載したからといって集客につながるとは限らない。一方、グルーポン型サービスは取引が成立した段階で支払いが終わり、収益が確定する。フリーペーパーなど効果の見えにくい広告市場を根底から覆す可能性を秘めるだけに、リクルートにとっても参入は悩ましい決断だったようだ。

   

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