2011年3月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
パソコンで国内首位のNECと世界4位の中国レノボグループが、今夏に共同出資で設立するパソコンの合弁会社について、レノボに5年後にその全株式を取得できる権利が与えられていることが明らかになった。両社は「イコールパートナー」と、対等の立場を強調するが、この権利はNECには与えられておらず、レノボがNECのパソコン事業を呑み込むのは「既定路線」(パソコン大手)との見方が専らだ。
合弁契約によると、両社は6月にもレノボ51%、NEC49%の出資比率で新会社を設立。その傘下にレノボの日本法人とNECのパソコン事業をぶら下げる。5年後にレノボが権利行使すると、NECのパソコン事業を丸ごと手に入れることができる。
かつてNECは国民機と呼ばれた「98シリーズ」を開発、国内パソコン市場の過半を握った。しかし、米ヒューレット・パッカードや台湾エイサーなど新興勢力に押されて海外からの撤退を余儀なくされ、国内シェアも約18%とジリ貧に陥っている。メーンバンクの三井住友銀行もパソコン事業の売却を促し、NECも身売り先を探したが、誇り高きパソコン部隊の説得にてこずり、即時撤退の衝撃を和らげる意味でも「5年間の激変緩和措置」(関係者)を設けざるを得なかった。NECの遠藤信博社長も、当初の「合弁の持ち株譲渡は百パーセントない」から、「レノボが権利行使すれば、対抗できない」と弱気に転じている。