「尊敬される日本」の創造めざす
2011年3月号
BUSINESS
by 取材 ジャーナリスト 児玉博
年明け恒例のJC「京都会議」に全国から約2万人の会員が集結。福井正興新会頭のもとで今年度活動方針について活気あふれる論議が行われた。
(上)京都会議最終日の新年式典で所信表明をする福井正興新会頭(下)最終日、一堂に会した会員たちが会場を埋め尽くした
吐く息は白く、境内に響く玉砂利を踏む音さえも固く、冷たい。1月20日、京都・下鴨神社。午前8時とはいえ、寒暖計の目盛りはようやく0℃から数ミリ上がった程度だ。この日の京都市内の最高気温はわずか5℃。
日本青年会議所(日本JC)の新年度の幕開けとなる通称「京都会議」は、この下鴨神社の参拝から始まる。
歴代「京都会議」を主催者側として開催し続けている京都JCのメンバーらに先導されるようにして、第60代会頭、福井正興ら日本JC幹部が境内を歩いて行く。
「(京都JCのメンバーとして)会頭を迎える立場だった自分が、まさか先頭を歩いて行くとは……。責任の重さを感じないわけにはいかない」。地元、京都の日本茶製造老舗、福寿園副社長でもある福井の表情が強張っているのは寒さのせいばかりではないようだ。
社殿で「公益社団法人 日本青年会議所会頭 福井正興」と黒々と揮毫を終え、福井をはじめとした日本JC幹部らは底冷えの中、初祈願をし、祓いを受ける。そして2頭立ての馬車に乗り込んだ福井を先頭に、京都府庁へと出発。代々受け継がれている府知事表敬訪問が行われる。古式床しいという言葉がふさわしいセレモニーは、こうして幕を開ける。
京都会議が日本JCの新年度の総会、そして年度の活動方針を、広く世に問うために開催されるようになったのは1967年(昭和42年)。前年に日本初の国際会議場である国立京都国際会館が完成し、それと同時に国際青年会議所(JCI)の世界大会が京都で行われたことを機に始まったものである。
京都の北、宝ヶ池にある京都国際会館をメインの舞台にし、4日間にわたりさまざまな会議、セミナー、フォーラムが開催される。今年は約1万2千人のJCメンバーが全国から集まった。
朝7時からの早朝会議から始まった3日目のメインフォーラムでは、保守主義を代表する論客である京都大学大学院教授、佐伯啓思による講演が行われた。今年度の日本JCのテーマ「進取の精神とクオリアの追求による『尊敬される日本』の創造」を記念したもので、講演に続き会頭、福井との対談が行われた。
領海侵犯した中国船船長の逮捕に端を発した尖閣諸島問題などを取り上げ、戦後日本の欺瞞を指摘し、真の独立国となるために日本人が大切にすべき「価値」を問う佐伯。福井も同調するとともに、地域や公共のために行動する者たちの集まりであるJCの活動の重要さを、会場を埋め尽くした会員たちに改めて問いかけた。また京都国際会館内の会場では、「ヒューマンセキュリティーの確立」「日本の未来選択」といったJCならではのセミナーが数多く開催されていた。
最終日。全国から集まった会員たちで熱気にあふれる同会場で、新年式典が行われ、全員でJCI綱領が高らかに唱えられた。その文句の最後は「人間の個性はこの世の至宝であり人類への奉仕が人生最善の仕事である」と、締めくくられている。JCに付託された責務が重みを増すなか、60周年の節目の1年がいよいよスタートした。(敬称略)