2012年11月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
バッジをつける中川郁子さん
Jiji Press
自民党の政権奪取は、時間の問題――。新聞・テレビ各社が取材体制を強化する中、興味深いハナシが飛び込んできた。自民党の下野の遠因になった故・中川昭一財務相の「酩酊会見」の真相を知る読売新聞経済部の女性記者が今秋、ニューヨーク特派員に転任するというのだ。
09年の自民党敗退はさまざまなマイナス要因が吹き出した結果だが、同年2月のローマG7財務相・中央銀行総裁会議の直後、当時の中川財務相がひどく泥酔した様子で会見に臨み、国内外の集中砲火を浴びたことも一因と指摘される。会見直前に中川氏は一部の記者と飲食しており、「そこで酒を勧められるがまま飲み、酔っぱらったのではないか」と囁かれてきた。
3年以上も前の出来事を蒸し返すのは野暮だが、件の女性記者が当時、政府要人や国会議員との宴席で「マドンナ的な存在であった」(大手紙デスク)ことはよく知られている。
「自民党シフト」の読売新聞の記者人事の中で「一種の海外逃亡劇」(霞が関筋)との穿った見方もあり、読売の同僚記者も「彼女の異動は社内で箝口令(かんこうれい)が敷かれている」と漏らす。なにゆえか。
読売が恐れるのは、次の衆院選で当選確実とされる中川氏の夫人である郁子さんの存在だ。彼女は麻生太郎・元首相ら自民党の重鎮が後見人となっており、憔悴する夫人を支え、後継候補に担ぎ出した経緯がある。
読売新聞上層部が、件のマドンナ記者と郁子氏が「鉢合わせしたらまずい」(自民党秘書)と慮って、ニューヨーク特派員の切符を渡したのではないか。
件のマドンナ記者はスクープゲッターとしてライバル紙にマークされる存在――。いかなるシーンであれ、国会議員バッジをつけた故中川夫人とマドンナ記者の遭遇を「パパラッチ」は見逃さないだろう。ニューヨーク赴任は、読売上層部の賢明な選択かもしれない。