2014年7月号 BUSINESS [インサイド]
奮闘空し? 島崎委員長代理
原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理(68)の再任はならなかった。一昨年9月に発足した規制委の人事を断行した細野豪志原発担当相(当時)は「原子力ムラから規制委に地震学者を入れるなと圧力を受けたが、3・11の教訓を生かすために、地震予知連絡会の会長を務めた、地震学の第一人者である島崎先生に無理なお願いをした」と振り返る。
被災地(福島市)出身の田中俊一委員長(69)は、委員長代理に島崎氏を指名し、世界で最も厳しい地震・津波対策を求める方針を打ち出した。島崎氏は「審査が厳しすぎる」と批判されるが「世界で起こる地震の10%が日本列島に集中し、狭い国土に50を超える原発をつくったことが大きな誤り」と、大方の地震学者は、島崎氏の見識を支持する。
11原発の新規制基準への適合性審査が進む中で、島崎氏を交代させたのは、首相官邸の意向。そこには原発再稼働を求める電力業界の執拗な巻き返しがあった。
原発推進派は目の上のタンコブの島崎氏を追い出しただけでなく、新委員として原子力ムラの権威、田中知東大教授(64)を押し込むことにも成功した。同氏は原発メーカーが母体の原子力産業協会の役員を務めたことがあり、東電の関連団体や原発メーカーから報酬や寄付を受け続けたムラの中心人物である。
田中俊一委員長は、現政権が選任し、学者としても格上の田中知氏を委員長代理に指名するとみられる。現委員長の任期は残り3年。「電力業界の根回しを受けた菅義偉官房長官は、後任委員長を睨んで田中知氏に白羽の矢を立てた」(経産省筋)。露骨な骨抜きによって規制委は「原子力ムラの砦」と化すのだろうか。