2018年6月号 BUSINESS [インサイド]
日本百貨店協会加盟の大手・中堅百貨店が長年続けてきた「売上発表会」の中止が相次いでいる。発表会は、同じ商圏で競合する各店舗の総務担当者が集まり、毎月の売上高を報告し合う商慣行。発表された各店舗の売上高を、その地域の代表社がまとめてリリースし、主に経済系の新聞や雑誌が取り上げてきた。
横浜高島屋やそごう横浜店、地元資本の横浜岡田屋などがひしめく横浜・川崎地域では、今年4月分から売上発表会を取りやめた。関係筋によると、地元記者クラブへの月例リリースも予告なく中止されたという。「各店舗とも人員削減で余裕がなくなった」というのが中止の理由だが、各店とも大幅に人員が減った形跡はなく、腑に落ちない。
ある百貨店の幹部は「公正取引委員会の絡み」と声を潜める。百貨店業界は今、公取委のターゲットになっているというのだ。事の発端は、昨年夏、公取委が大阪の複数の百貨店の立ち入り検査に入ったこと。中元・歳暮の送料を巡ってカルテルを結んだ疑いだった。これをきっかけに「公取委が業界の馴れ合い体質にメスを入れようとしている」との風評が広まった。実際、立ち入り検査のあった大阪地域では、昨年秋から売上発表会を一斉に取りやめている。
ある百貨店社員によると、売上発表会は、多くが日本百貨店協会の職員の立ち会いのもとで開かれていたという。公取委は、協会公認の「公式行事」として、毎月の売上というセンシティブな経営情報を交換しあう会合を開くことが、カルテルの温床になっていると指摘したようだ。 本誌の取材に対し、百貨店協会は、「そのような会合は把握していない」の一点張り。公取委も「個別事案は回答できない」と言うだけだった。しかし、公取委の指導は強烈で、百貨店社員は同業他社との交流会はおろか、顔を合わせるのも避けているという。「地域を盛り上げる呼び掛けもできなくなる」と、嘆く声も。