2018年7月号 POLITICS
来春の北海道知事選が、キナ臭くなってきた。経産官僚出身の自民党系現職・高橋はるみ氏(64)の5選不出馬が確実視される中、後釜にまたも元経産官僚の名前が浮上。3年前、テレビ朝日「報道ステーション」の生放送中に「I am not ABE」の紙を掲げる「放送事故」を起こし、時の人となった古賀茂明氏(62)である。
無論、自民が反アベ・原発ゼロの急先鋒を担ぐ訳がない。話の出所は、与党でも野党でもなく、古賀氏本人の言動だ。突如として政治塾「フォーラム4北海道・古賀みらい塾」を主宰すると発表。4月25日、皮切りとなる講演会を札幌で開いた。
この場で古賀氏は、財務省前事務次官のテレ朝記者へのセクハラ問題の内幕を暴露。相変わらずの「爆弾男」ぶりを印象づけつつ、北海道の人口減少克服や観光振興の方策を滔々と語った。会場には連合北海道幹部の姿もあった。
講演後、地元テレビ局の取材に対し、聞き捨てならない発言が飛び出す。道知事選出馬について「2万パーセントない」と語ったのだ。10年前、橋下徹・前大阪市長(48)はこれと全く同じコメントを発し、舌の根も乾かぬうちに府知事選に打って出た。古賀氏はかつての橋下氏のブレーンである。
ではなぜ、北海道なのか。長崎県出身。官僚時代に北海道勤務はなく、縁もゆかりもない。
接着剤になったのは、塾の設立を持ちかけた市民団体「北海道の未来を拓く会」だ。札幌の経営者らで構成し、北電泊原発の再稼働に警鐘を鳴らしている。道議会専用の豪華庁舎建設に130億円を投じる計画にも抗議を続け、「人気はあるが、議会の言いなりで何もしない」との評が立って久しい高橋知事とガチンコ対決を繰り広げてきた。
地元誌記者は同団体について「これまで政治色は見えなかったが、高橋道政の体たらくがそのまま継承されることに危機感を抱き、主張が似通う古賀氏に近づいたのだろう」とみる。
とはいえ爆弾男の立起は、たやすいことではない。
自民党北海道連は「ポスト高橋」として、中央官僚や道内の市長ら複数人をリストアップ済み。立憲民主党を軸とする野党サイドも、国会議員や経営者らを俎上に載せている。古賀氏が完全無党派を標榜したとして、反アベ票を食い合えば、確実に保守陣営を利する。本意ではあるまい。
古賀氏を野党統一候補に祭り上げるのも、また難しい。立憲の枝野幸男代表と、ソリが合わないのだ。16年の東京都知事選で、当時の民進党都連は古賀氏擁立でまとまりかけたが、「枝野幹事長らがちゃぶ台を返し、あの鳥越俊太郎氏への差し替えが決まった」(古賀氏周辺)。
報ステとの関係然り、橋下氏との関係然り、一時的に重用されても、結果的に袂を分かつケースが、やけに多い人物だ。内に秘めた激烈さ故なのか。その古賀氏は最近のブログで「北海道の道路は直線的で交通量が少ない。自動運転の実験で国家戦略特区に申請してはどうか」と、「公約」まで披露している。
安倍首相が9月の自民党総裁選で3選したとして、統一地方選は最初の大型選挙だ。塾の講義はその直前の来年2月まで続く。道知事選で「I am not ABE」の訴えが轟くのか、見ものだ。