専門医と連携し高齢者を見守る
2019年6月号
BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]
1974年大阪府生まれ、44歳。2000年大阪外国語大学大学院を修了しIT企業の代表取締役を経て、17年エコナビスタに入り代表取締役に。
――新しい「見守り」です。
渡邉 疲労や睡眠の専門医と連携した高齢者見守りシステムを提供しています。非接触型のセンサーで呼吸や心拍、身体の動きなどのデータを取って睡眠の状況を調べます。1日24時間365日継続して見るので、ベッドに横になっているが眠りは浅くて十分でない日が続いているとか、無呼吸の時間が長くなったとか、昼寝が長過ぎるとか、夜中に何回も目が覚めているとかが全部わかります。専門医にデータを送って分析してもらい、月1回コメントをフィードバックします。部屋の温度や湿度、ドアの開閉、居室内やトイレでの活動状況もセンサーでモニターし、スマホやタブレットに表示されるアイコンで常時確認できるようにしています。室温を随時測るのは温度感覚が鈍い高齢者の方が夏場に誤って暖房を入れて熱中症になってしまう事故を防ぐためです。湿度はインフルエンザ防止に役立てます。活動状況は徘徊防止や室内での事故、急な病変に気付けるよう見ています。
――どうしてこのサービスを。
渡邉 介護現場は今、人手不足に困っています。1時間、2時間おきにいくつもの部屋を見て回らなければならず、その間もナースコールで呼ばれたりして本当に息つく暇もないぐらい忙しい状態です。これを使えば多くの人を集中管理でき、無駄なくより的確な対応が取れるようになります。現在、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで利用していただいています。システムの精度がこのほど眠りの深さを測定する医療機器、簡易型PSGと同等レベルだとわかりましたので、医療機関が展開する介護医療院でも実証試験が始まりました。
――なぜこの世界に。
渡邉 当社は大阪大学発のバイオベンチャー「総医研ホールディングス」の創業者で、大阪市立大学の疲労医学講座特任教授の梶本修身先生が、医療と、IoTを融合させた会社を作りたいとの思いから立ち上げたベンチャーです。大学院生の時、先生と協力してアルツハイマー病を調べる脳機能検査プログラムを作ったことがあり、社長をやってみないかと誘われました。
――次の一手は。
渡邉 サービスを一般家庭へも提供しようと、昨年、東京ガスと資本業務提携をしました。ガス会社は家庭への「ラスト・ワンマイル」を握っています。東京ガスはガスの利用状況を用いた安否確認サービスを行っていて、すでに30万世帯のお客様が使っていますので、そこへわが社のセンサーを使ったサービスを広げていきます。集まったデータの解析やビッグデータの利用で新たなサービスも展開しようと考えています。
(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)