2019年6月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
レオパレス21に続いて大和ハウス工業でも建築基準法違反が発覚した。どちらも、いわゆる「型式認定」制度を使うことで建築確認検査のチェックをすり抜けたのが原因で、同制度に対し一部の業界関係者らの間で懸念が広がっている。
1960年代、住宅の工業化=プレハブ化が本格的に始まった。当時は複雑な構造計算を電卓を叩いて行っており、一戸ごとに住宅性能をチェックするのは手間と労力がかかる。そこで建設省(現・国土交通省)は73年に「工業化住宅性能認定制度」の名称で型式認定を導入。指定検査機関で型式認定を取得した住宅商品や建材は、建築確認で構造計算書などの提出を省略できることになった。
その後、95年の阪神・淡路大震災で住宅にも大きな被害が発生したことから、2000年に住宅品質確保促進法が制定され、住宅性能を個別に評価する「住宅性能表示制度」ができた。しかし型式認定は、国交省の歴代技術系住宅局長の天下り先である日本建築センターの自主認定制度として存続。耐震強度データ偽装事件(姉歯事件)を受け、構造計算の二重チェックを導入した07年の建築基準法改正後も活用されてきた。
検査機関は型式認定を受けた住宅商品の細かな設計仕様まではチェックしていない。構造計算がブラックボックス化するので、他社が大規模改修するのも難しい。建築基準法違反は「他の住宅メーカーでも可能性はある」と、業界関係者は語る。
実は、デジタルテクノロジーが発達した現在でも、2階建て以下の小規模な木造戸建て住宅で構造計算のチェックを省略できる制度も残っている。日本の建設業は海外に比べてIT化で大きく出遅れ、こうした時代遅れの遺物が残ったまま。国交省では今年度から建築のIT化を推進する「建築BIM推進会議」を立ち上げるが、果たして信頼できる建築生産システムを構築できるのか。