JX通信社 代表取締役 米重克洋氏

「ニュースの種」AIで網羅探索

2020年7月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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米重克洋氏

米重克洋氏(よねしげ かつひろ)

JX通信社 代表取締役

1988年山口県生まれ、31歳。中学3年時に航空業界ニュースのサイトを立ち上げる。学習院大1年の2008年1月にJX通信社を設立し、代表取締役に就任。

――引っ張りだこです。

米重 我々が得意なのは速さと網羅性です。新聞社やテレビ局は発生モノの「特落ち」を避けようと1日に何度も警察に電話をかけたり、かなりの人数をかけて5分に1回とかネットを検索したりしてきましたが、人間がやり続けるのは辛いですよね。そこで、機械を使って素早く、取りこぼしなくニュースの種を拾い、報道機関に知らせる「FASTALERT(ファストアラート)」を開発しました。20
16年9月にリリースして17年4月にはNHKと在京キー局全局に導入していただきました。現在、新聞社も含めほぼデファクト・スタンダード状態です。

――どのような仕組みですか。

米重 事件や事故、災害、気象系、今だと感染症の情報をTwitterなどSNSの投稿からAIを使って幅広く収集・解析し、何がどこで起きたかを伝えています。SNS情報は、例えば「火事」を検索すると「口が火事」とか「焼肉が火事」とか99.9%が本当の火事と関係ないものです。我々は自然言語処理の技術でこうした無関係の情報を取り除き、さらに機械学習で言葉と画像を解析してニュースの種を探し出します。機械学習は、人間が見抜けないほど細かいパターンを膨大な数学習しているので、火事の煙か焚き火かなどを瞬時に見分け、フェイクの除去にも重要な役割を果たします。ネットでは、大阪北部地震の時に台湾の地震の写真がアップされたように画像を使い回すタイプのデマが多いのですが、99%以上排除できます。

――ここに目をつけた理由は。

米重 物心がついた頃からのニュース好きで航空オタクでもあったので中3で航空業界のニュースサイトを作りました。その頃オルタナティブ・ニュースサイトが出てきてすぐに潰れました。自分のサイトも儲からず、ニュースのコスト構造の重さに気づきました。そこでメディアがコンテンツを売買する市場を創り、ワンソース・マルチユースにしたらコストを頭割りにできるのではと考えましたがうまくいきませんでした。11年、コスト構造を根っこから改革しようと機械学習でニュースを要約しタグ付け分類をして新聞社に提供し始めたところ、この技術がニュースの検知に使えることがわかりました。15年、イスラム過激派がジャーナリストの後藤健二さんらの殺害動画を流したのを、一早く覚知したことがわかり本格参入しました。

――メディアへの期待は。

米重 報道機関は政治や経済の重要な話題をしっかり社会に問う役割も担っています。ニュースの覚知など単純作業は機械に任せ、アジェンダ設定など人間にしかできないことに人材を回していただけたらと思います。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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