2020年11月号 連載
FACTAは情報誌である。情報の命は“精度”である。情報の精度とは「確かさ=客観的な裏付け」である。量としての情報は溢れているが“その精度は”となるとどうか。情報は誰が見ても同じ、つまり“真実”でなければならない。しかし、現実の情報の殆どは“事実”である。事実段階の情報の厄介な所は、それに係わる人の数だけの情報がある事である。事実というのは、現在する具体的な状況を踏まえた上でのものだから係わる人の立場により内容が異なる事になる。世の中が複雑になればなるほど、情報には「精度=確かさ」が求められる。ところで雑誌の経営を支えるのは広告である。しかし、FACTAには広告が殆どない。経営的には無謀とも言えるこの広告収入のない雑誌という「暮しの手帖」的経営手法が、資本主義経済の中での唯一真実に近い情報を提供できる道であるといえよう。反面、収入の殆どを購読料で賄うという編集者への負荷が、書店販売なしで年間購読という販売方法と「噂の真相」的な編集に繋がっており、この編集方針が常に真実に近い情報を提供できるかどうかの勝負所なのではないだろうか。
未來音楽企画 監事 阿部愼介