2022年7月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
参議院選挙は6月22日公示、7月10日投開票である。岸田文雄内閣に対する支持率は、各種メディアが5月時点で60%前後。「自民党大勝」となるのか――。岸田首相の「声なき声を聴く」に倣ってみよう。
子どもたちが、家族の介護などをしている「ヤングケアラー」。日本総合研究所が4月に発表したアンケートによると、小学6年生の中で「世話をしている」と回答したのは6.5%。就学前からが17.3%、低学年からが30.9%もいる。
「就職氷河期世代」――。雇用環境が厳しかった時代に就活した30代半ばから40代半ばの人々。リクルートジョブズの2020年の調査によると、非正規で働いている人は約589万人にも及ぶ。
仏の人口統計学者である、エマニュエル・トッドは『老人支配国家 日本の危機』(文春新書)の中で「人口問題は、数十年の潜伏期間を経て一気に発現します。その観点から言えば、人口減少は日本にとって最大にして唯一の課題です」と指摘する。
昨年の出生数は84万人。6年連続で過去最少を更新。厚生労働省は「新型コロナウイルスの感染拡大に伴って妊娠を控えた」とする。それだけではないだろう。同省による「世帯の所得状況」(22年)によると、29歳以下の1人当たりの所得は約163万円、30~39歳は約179万円である。この水準で子どもを育てられるのか。
21年の衆院選における投票率は、全体で55.9%。20代は36.5%。30代は47.1%。若者たちは明日に希望が持てないのではないか。
社会調査研究センターが4月に実施した世論調査によると、内閣支持の構造に変化が生じた。与党に期待した若者が高く、老齢者が低い「若高-老低」から、逆の「若低-老高」になった。
「与党離れ」を起こした若者たちの受け皿となる野党がないことが、「老人支配国家」日本の不幸である。
(河舟遊)