2022年10月号 連載
蔵書を本棚ごと保存する適地探しで高知県大川村を訪ねた。村議員のなりて不足で「議会を廃し有権者による町村総会(地方自治法第94条)を」と日本の民主制度に一石を投じた、200世帯400人弱の山村だ。ノーベル物理学賞の眞鍋淑郎博士は山を越えた愛媛県新立村の出身だ。
読んだ本で人柄は知れる。街の賢人たちの廃棄される書籍を個人アーカイブとして書棚ごと引き受け集積させる「個人知の書庫づくり」は土性骨の据わった和田知士村長と村人たちならできると考えた。
IT・AIの進化による「可視化される社会」で諸制度・行動様式などは大きく変わる。その変換・学習期にあって、科学的知見や人の営みを軽視しデータを破却する日本は酷すぎないか。私を含む旧世代の焚書の慣習から知のベースを守り次世代のアーキビストにつなぐ、ALSのピーター博士のAI知・蔵書部版だ。
事実と真実に忠実に向き合い、後世の進化に託す人新世へのつなぎ役「知の守り人FACTA」と創刊からの読者は期待している。
松下政経塾第2期 高橋秀明