2022年10月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
食品を中心に9、10月は値上げラッシュの様相を呈している。昔だったら買いだめするところだが、長らくデフレにドップリ浸かってきたため対応が後手に回ってしまう。野菜も今年は高いものが多い。たまねぎはひところと比べると落ち着いたが、まだ平年比で1.4倍。トマトも1.2倍だという。
山梨に畑と小屋を借り、半農半Xを実践している。ほとんどの週末を農作業に充て、最近はめったに野菜を買わなくてすむ。とはいえ、育てる手間暇と東京からの往復の交通費を考えたら、コスパが良いとは言えない。作物はそれぞれ植え方や手入れの仕方が異なり、慣れるまで神経を使う。せっかく芽が出てきた株の間引きや伸びた枝の剪定は、ついもったいない気がしてしまう。
うまく育ったと思っても、菌やウイルスによる病気、虫、日照りでダメになってしまうことも多い。今年はきゅうりとピーマンが収穫半ばで枯れてしまった。一方でナスやオクラ、スイカは豊作で食べきれないほどだった。
カメムシやウリハムシなどの虫対策と雑草取りには終わりがない。無農薬でやっているので2週間も空けると大変なことになる。夏の昼間は暑くてとても作業ができないので、朝と夕方に2時間ずつ費やした。汗だくになってがんばっても大抵、終わらない。これを仕事にする農家の方のご苦労を思うと、頭が下がる。
近くの棚田から見る富士山、夏前に乱舞していた蛍、鳥の鳴き声、星空など自然を満喫できる。今年は少し歩いたところから見える花火大会も開催された。友人から田舎は保守的だから大変だと聞いていたので覚悟していたが、地元の人たちは親切で、ストレスはほとんどない。日本の地方はどこも人口減少と高齢化に悩んでおり、移住者を増やすために気を遣ってくれているのかもしれない。その期待に応えたい。
(ガルテナー)