2023年1月号 連載
2023年問題を契機に、日本の多くの医学部のカリキュラムは、国際基準を満たす内容へと大幅に改定された。北海道大学では、教養課程が2年から1年に短縮され、その分、病院での実習時間が補填されることとなった。私はこの状況に危機感を覚える。学問はドイツ語でWissenschaftという。Wissen–知のSchaft–集合が、学問なのだ。では、どこまでの知識が集積されることで、医学は成立するのだろうか。
医学は、理論や実践を体系化した科学であることは間違いない。しかしながら、医学が医療という、人を対象とする行為で完結される以上、患者の背景にある価値観や文化、歴史に対する教養を抜きに、治療を語ることはできない。専門に留まらない教養の土台を広げ、自分の言葉で物事を説明する。そのための準備こそ、私たち医学生は求められているのではないだろうか。
弛まぬ物事の本質への追求―。学問、そして、患者と向き合う上で欠かすことのできない精神を、FACTAは教えてくれる。
北海道大学医学部 金田侑大