賃上げ実現こそ日本復活の出発点
2023年3月号 POLITICS [リーダーに聞く!]
1969年香川県寒川町(現さぬき市)生まれ。東大法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。ハーバード大ケネディ・スクールで公共政策修士。09年民主党公認で衆院初当選(5期)。18年に国民民主党を結成。
――今国会を「賃上げ“実現”国会」と位置づけていますね。
玉木 日本経済最大の課題はこの25年、実質賃金が下がり続けていることだと訴えてきました。奨学金を返せない、結婚できない、子供をつくれない…すべての根っこには、賃金が上がらない経済に問題があります。いまこそ解決に取り組む必要があります。
――日銀が異次元緩和から転換しました。物価上昇で生活苦は深刻です。
玉木 米国の賃金上昇を伴う“良いインフレ”に対して、日本はエネルギー価格、あるいは輸入物価の高騰が要因の“悪いインフレ”。その状況での金融引き締めは、景気をさらに悪化させます。金融緩和・積極財政は名目賃金上昇率が4~5%を達成するまで続けるべきです。今年前半の金融・財政政策は非常に大事です。
――消費税減税や社会保険料の減免も訴えています。実現可能性はありますか。
玉木 消費税減税は物価抑制に直結し、消費喚起にも役立ちます。政治的に難しいというのであれば、例えばインフレ手当(給付金)、電気料金の負担軽減策をとる必要があります。電気料金の上昇は企業利益も圧迫し、従業員の賃上げ原資を損ないます。
――21年の出生数は約81万人と過去最低でした。一方、岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」は評判が悪いようですが。
玉木 少子化の要因はやはり経済的理由が大きい。所得が上昇基調になれば将来見通しが立ち安心できる。結局、究極の少子化対策は賃上げなのです。
特に力を入れているのは、子育て支援の所得制限の撤廃です。「部長への昇格を打診されたが、昇格すると所得制限にひっかかるので留保している」という相談を受けました。悲しすぎるケースです。これまで3回、所得制限撤廃法案を出し、この問題を先導してきたという自負もあります。自民党の茂木敏充幹事長らが、児童手当に限っているとは言え、撤廃を示唆していることは大きな変化です。
――なぜ「失われた時代」が続いたのでしょうか。
玉木 大きな要因の一つは、教育と科学技術に予算を使わなくなったからだと考えています。この20年で科学技術予算は、中国が約23倍、韓国が4.7倍となっています。日本は0.9倍ですよ。IMD(国際経営開発研究所)の世界競争力年鑑では、私が大学生だった89年から4年連続日本が1位でしたが、現在34位です。
最も脅威を感じたのは、学術論文の被引用数(影響力)が上位10%に入る「注目論文」で、日本が初めてベスト10から陥落し12位になったことです(文科省・科学技術指標2022)。圧倒的1位は中国。研究力は数年後、民間の製品開発にスピンアウトし国全体の競争力となります。日本の稼ぐ力の低下は構造的な問題です。「教育国債」を発行して、速やかに教育や研究の予算を倍にすべきです。
――首相や自民党内から解散総選挙が語られるようになっています。
玉木 国民民主党の比例票は一昨年の衆院選259万、昨年の参院選が316万で22%増です。選挙のたびに評価が上がっていると実感しています。選挙ごとに2~3割、比例票を増やし600万票を取れる政党になればキャスティングボートを握ることができます。
我々の政策や理念は非常に明確で日本が進むべき道だと自負しています。ユーチューブ「たまきチャンネル」の登録者数は約15万人となりました。イラストが好評で「たまき画伯」の異名もいただいています(笑)。
(聞き手/本誌副編集長 田中徹)