2023年9月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
名古屋を発祥の地とする「コメダ珈琲」が7月中旬、東京・新橋に1千店目の出店を果たした。新橋駅のシンボルである烏森口の蒸気機関車に近い。サラリーマンの街・新橋は飲食店の激戦地である。店舗は午前7時開店で11時までがモーニング帯。「コーヒーに無料でモーニングセットがついてくる」がコンセプト。パンと卵料理、バターなど選択ができる。アイスコーヒーにトーストとゆで卵、バターを塗ったセットを頼んだ。640円(消費税込み)である。
米屋を営んでいた創業者の加藤太郎氏が1968年に1号店を開店した。2013年にはフランチャイズ店を中心として500店を突破、台湾など海外展開も進めている。
国内のライバルでは、シアトル発祥のスターバックスが約1800店、東京・原宿駅近くの1号店から始まったドトールが約1300店。コメダの快進撃は喫茶店業界で「西風は東風を圧する」感がある。
富士経済の2022年時点の推計によると、日本の喫茶店・コーヒー専門店の市場規模は約7500億円。トップのコメダは2位以下を引き離して全体の10.8%を占める。
コメダの店づくりは、天井を高くしてゆったりとしたソファー感覚の客席、そして「ホールスタッフ」と呼ぶ店員が客の注文を取りに来る。新聞や週刊誌、女性誌も棚に揃っていて読み放題。
かつてテレビのクイズ番組で、名古屋の喫茶店に餡を塗って食べるトーストが取り上げられて「ひな壇」のタレントたちを驚かせた。東京のコメダの顧客はいまやモーニングで「餡」が選べることを知っている。
マクドナルドは今春から「喫茶マック」を始めた。星乃珈琲も格安のモーニングで、ドリンクにトーストとゆで卵またはミニパンケーキがついてくる。コメダが仕掛ける「喫茶店革命」は、百貨店やスーパーが覇を競った時代を思い出させる。
(河舟遊)