2025年5月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
関西3空港を運営する関西エアポートは4月1日から大阪国際空港(伊丹空港)の運用制限時間である午後9時を過ぎて離着陸する航空便に対して「夜間騒音抑制料」徴収を始めた。正規着陸料と別に同料金の2倍に相当する金額を航空会社に請求する。不安定な天候で遅延便が増え、2022年度は過去最多の132便に上った。徴収した料金は空港周辺地域の生活環境の改善事業に充てる。
表面的には夜間発着の騒音抑制策だが、見方を変えると追加料金支払いで午後9時過ぎの伊丹発着便を可能にする施策となる。関西には関西国際空港と神戸空港もあるが、都心部へのアクセスで伊丹に軍配が上がる。伊丹着陸が午後10時だと羽田空港発は午後9時でよい。「東京で一席こなして帰阪できるなら喜んで追加料金を払う」と話す関西財界人は多い。「夜間騒音抑制料」で近隣住民が「門限破り」に慣れてから運用制限時間を午後10時に繰り下げる狙いが見え隠れする。
伊丹空港は今年から英語表記を「Osaka Itami Airport」に変更した。米軍接収時の「伊丹エアベース」を思わせる。これまでの英語表記は「Osaka International Airport」だったが、関西国際空港の「Kansai International Airport」と混乱しがちだったのを改める。大阪・関西万博の開幕で関西に滞在するインバウンド(訪日外国人)が増えることへの対応だ。
国際便を関空に全て移管した伊丹だが、日本語表記は大阪国際空港のまま。「国際」を外すと格落ち感が出て、近隣住民のプライドを傷つける。神戸空港は4月から韓国、中国、台湾の5都市に国際チャーター便を飛ばすが国際空港ではない。「週40往復のチャーター便は不便だ」という声が上がるのを待って関西エアポートは伊丹空港の再国際化を目指す。伊丹空港の改良工事は国内線専用とは思えぬほど大掛かりだ。国際チャーター便就航は伊丹再国際化に反対しそうな神戸・兵庫のガス抜きが目的だろう。伊丹空港の日本語名称に「国際」を残した真意はここにある。
(松果堂)