「首長連合新党」を封じ込めた原口総務相

2009年12月号 連載 [LOCAL EYE]

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10月30日、原口一博総務大臣は地方分権改革に地方の声を反映させるため、神奈川県の松沢成文知事や名古屋市の河村たかし市長ら自治体トップら14人を総務省顧問に任命し、政界筋に波紋が広がった。というのも、そこには前横浜市長の中田宏氏や杉並区長の山田宏氏までが名を連ねていたからだ。

中田氏らは1年前から新党結成を目指してきた。山田宏区長など松下政経塾OBや旧日本新党のメンバーらと密談を重ね、途中から橋下徹大阪府知事らを取り込み、地方分権を訴えながらマスコミへの露出を高めていた。

政権交代がほぼ確実となった総選挙前に、中田氏は任期を残して突然市長を辞任したが、それは来夏の参院選を睨んで新党結成に向かうためと囁かれてきた。中田氏らは総務省顧問就任発表の翌日、都内のホテルで「よい国つくろう! 日本志民会議」の設立大会を開き、新たな政治運動の展開をアピール。新党結成について問われると「どんな可能性も排除しない」と語り、参院選を視野に入れているかに見えた。

しかし、中田氏ら首長連合のメンバーの顧問就任が伝わるや、新党結成は遠のいたとの見方が広がった。総務省の顧問として民主党の地方分権改革に協力しながら、民主党と対立する新党を立ち上げるのでは筋が通らないからだ。

今年9月の大阪・堺市長選で、橋下徹知事が肩入れする新人候補を首長連合が応援し、現職候補を破る快挙を成したため、民主党幹部は「次の参院選では、国民にそっぽを向かれた自民党ではなく、橋下府知事を軸とする首長連合新党と対峙することになる」と警戒感を強めていた。当然、中田氏らも顧問就任を固辞すると見られていたが、打診を受けた途端にうれしそうに快諾。先の幹部は「中田氏はやはり現実主義者。勢いのある政権を敵に回すより、日のあたる所に居たほうがよいと判断したのでは」と語る。原口総務相(4期生)、山田区長(2期生)、中田氏(10期生)はいずれも松下政経塾OB。原口総務相はポストを餌に先輩後輩の取り込みに成功した。

   

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