中高年男性が陥る「DS被害」

2010年4月号 連載 [IT万華鏡]

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昨年から急増してきたドロップシッピング(DS)の被害。消費者生活センターへの苦情件数も急増しており、集団訴訟を抱えるDS業者も登場。3月1日にはついに、東京都がDS業者2社に対して営業停止9カ月という国内初の行政処分を下した。

被害者で目立つのが中高年男性。消費者生活センターを統括する消費者庁の関係者は「いわゆる内職詐欺に多い主婦や高齢者ではなく、ある程度のネットリテラシーを持つ中高年男性の被害者が少なくない。冷静に考えれば、儲からないことなどわかるはずだが……」と苦い顔だ。

中高年男性が陥りやすいのは、DSが馴染みやすいビジネスモデルだからだろう。DSとは、自分で在庫を抱えることなく行うネットショップの一形態で、直訳すれば「直送」となる。販売用のウェブサイトを構築し、注文が入ればメーカーや卸業者に商品を発送させるという仕組みだ。販売額を自分で決め、仕入れ値との差額で利益を出す。在庫リスクがないため、理論上は注文数に比例して利益が上がる。サービス自体は何ら違法性のあるものではないが、そのわかりやすさに落とし穴がある。

トラブルの多くは、DSを始めた個人と、その開業に際して初期費用を名目に数十万~数百万円を徴収するDS仲介業者の間で発生している。当然ながら、サイトを開くだけでは利益は上がらない。仲介業者はそこにつけ込んで、検索エンジン対策だなんだと、あの手この手で費用を掠め取る。販売支援や商品発送が契約通りに履行されないケースも多く、「注文がうまく入らず、初期費用すら回収できない。話が違う」「注文が入っても商品が納品されず、収入にならない」といったことになる。

悪質な仲介業者の中には、本業がうまくいっていないウェブ制作会社などの姿も見え隠れする。副業ブームに乗って、詐欺まがいの業者を儲けさせたのでは洒落にもならない。

   

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