2010年4月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
「新銀行東京がメガバンクに融資の申し込みに回っている……」。関係者によれば、プレミアム定期預金の大量満期が今年6月に到来するため、返済原資に困ってメガバンクに融資を頼みに回っている、ということらしい。
石原慎太郎・都知事の肝煎りで開業した同行は瀕死の有り様だ。09年9月の中間決算で当期利益は10億円の黒字だが、本業での儲けを示す業務純益は9億8千万円の赤字。09年第3四半期決算(09年4月~12月)でも、当期利益は14億円の黒字だが、業務純益は13億円の赤字。つまり、経費削減や貸倒引当金の戻入益などで最終利益を出してはいるが、実際はひたすら縮小均衡の道を突き進んでいるのだ。
事実、この1年間に預金残高が1千億円以上減り、2千億円の大台を割りそうだ。中小企業を中心とする融資残高も1100億円台に減っている。
それも当然だろう。同行は08年3月に親元である東京都から400億円の追加出資を受けるとともに、大幅なリストラ計画を発表し、経営再建に動き出した。その結果、営業店舗は本店のみ、職員数も450人から120人に激減。さらに、1月には、仁司泰正・元代表執行役と丹治幹雄・元執行役に対して、善管注意義務違反などを理由に5億円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起。その一方で、都内の複数の信用金庫から保証業務に関する保証金の不払いで訴訟を起こされ敗訴するなど、経営再建はおぼつかない。
おまけに、今度は定期預金の満期で返済原資不足に陥り、メガバンクに泣きつく始末。新銀行東京の関係者も「店舗がないから預金が集まらない」とホンネを漏らす。
問題になっているのは、05年に全面開業記念「特別金利キャンペーン」として年利1.0%で集めた5年物定期預金。その満期が6月に迫る。ちなみに他行の定期預金の金利は、現在0.3%以下。この6月を乗り切っても、12月には再び年利1.0%の5年物定期の満期が到来する。さらに、「開業1周年特別金利キャンペーン」として、年利1.7%でかき集めた5年物定期の満期が来年5月に来る。
津波のごときプレミアム定期の満期返済に、同行は耐えられそうにない。09年6月に新生銀行の専務執行役から代表執行役に就任した寺井宏隆氏は、「東京都と銀行の板挟みで死に体になっている」(新銀行東京関係者)という。もはや沈没寸前か。