選りすぐりプロ人材が地方創生サポート

村上 敬亮 氏
内閣府地方創生推進室参事官

2016年10月号 POLITICS [インタビュー]
インタビュアー/児玉博

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村上 敬亮

村上 敬亮(むらかみ けいすけ)

内閣府地方創生推進室参事官

1990年通産省(現経産省)入省。長年、官の立場からIT業界に携わり、同省のIT戦略を立案。資源エネルギー庁新エネルギー対策課長を経て、2014年から現職。

――ローカル・アベノミクスを実現するため、内閣府に「まち、ひと、しごと創生本部」が誕生して2年になります。

村上 地方創生がなければ、日本はグローバルで稼ぐ東京と縮小均衡に陥る地方とにますます分断されていきます。このため、昨年、地方に自立を促す新型交付金(地方創生推進交付金等)を創設するとともに、地方への人材還流を促すプロフェッショナル人材戦略事業を始めました。

「交付金」と同じく「人材」という言葉も、聞き飽きた文句かもしれませんが、我々の捉え方は従来とは全く違います。

――具体的には?

村上 まず各都道府県にプロフェッショナル人材の拠点を設け、ややもすると保守的な経営に陥りがちな地元の経営者に考え方の革新を迫る事業経営のプロを、そのトップに据えました。

――どんな人たちですか。

村上 例えば、ホンダの「F1」総責任者だった方とか、「マツダ」で海外戦略や総務を一手に担っていた方とか、中には地銀のトップ幹部だった方もおられます。

変わり種では、ある都道府県の現役部長の方が、退職金の減額も承知の上で早期退職し、応募してくれた例もあります。

数合わせのプロ人材は一人もいません。知事面談で選ばれ、直々に委嘱状を授けられた錚々たる事業実績を持つ皆さん全員が、本気で地域の経営を変えようと意気込んでくれています。

――彼らでなければできないことはなんですか。

村上 一流のプロの目には、地域企業の問題点や改善点がはっきり見えるんですね。事業経営のプロのアドバイスを受けるようになってから、地方の経営者の皆さんの要求が、よりピンポイントになった。つまり、抱えている問題がはっきり見えてきたと感じます。

これまでは、地方に行きたがるプロ人材がそもそもいないという議論が主流でした。でも違う。足りなかったのは、腹の据わった経営者が生み出す本気の求人だったんです。

実際、個人ばかりでなく大企業の人事からも、様々なコンタクトがあります。大企業も動こうとしています。

――大企業の人材にも変化が起きているのですね。

村上 例えば、あるサービス産業大手は、40歳代でラインに乗っていない社員の基本給を下げる、つまり一見ネガティブなメッセージを送ることによって、ポジティブな退職、起業へのステップを促そうとしています。また、副業の奨励も、徐々に大きな流れになってきました。

大企業による人材の抱え込みが徐々に幕を閉じようとしているんだと思います。

東京都と地方を行き来する生活スタイルが定番になる日が、そう遠からず、やってくるでしょう。それには高すぎる交通料金とか、いくつかのハードルがありますが、東京ではなく、地方にこそ活躍のフロントがあると考える人の流れは間違いなく動き始めています。

   

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