『続・全共闘白書』

無名戦士たちの「遺言」集

2020年3月号 連載 [BOOK Review]
by 高成田享(ジャーナリスト)

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『続・全共闘白書』

続・全共闘白書

著者/続・全共闘白書編纂実行委員会
出版社/情況出版(本体3500円+税)

全共闘運動にかかわった人たちから集めた450を超えるアンケートの回答を全文収録している。その自由回答の書き込みを読んでいくと、「全共闘」を背負ったそれぞれの人生が浮かび上がってくる。涙を禁じ得ないエピソードも多く、世代を超えて読み継がれる記録集となるだろう。

巻末の「集計と解析」によると、運動に参加したことを「誇りに思う」という回答が70%、何らかの政治活動や社会運動への参加意志がいまも「ある」との回答が60%あった。

全共闘世代は、「団塊の世代」と呼ばれる1947年から49年生まれのベビーブーマーと重なるが、当時の大学進学率は20%前後だから、全共闘世代は団塊の一部で、全共闘運動に参加したのは、さらにその一部にすぎない。アンケートに回答した人たちは、運動への思い入れのある人たちが多いということもあるのだろうが、懲りない世代かもしれない。

かくいう私も友人から回ってきたアンケートに同じように回答した。全共闘の隊列の最後尾にいて、逃げ足には自信があった。それでも、騒擾(そうじょう)罪が適用された1968年10月21日の「新宿騒乱」では、駅構内のホームにいた記憶がある。投票だけでは、世の中は変わらない、という思いはいまもある。

四半世紀前の1994年に刊行された『全共闘白書』(新潮社)の続編だが、「まえがき」によると、「前回にくらべて、“思いのたけ”が濃密に書き込まれている」という。

子どもが不登校になったときに、進学にも支障が出ると狼狽したが、「大学解体」を叫んでいた自分を思い出し、不登校は抑圧的になっている学校教育に対する子どもなりの「異議申し立て」と考えるようになった。現在は、ひきこもりの家族会やフリースクールの運営にかかわっている。そんな全共闘体験を昇華している話を読んでいたら、いい人生ですねと、回答者に敬意を表したくなった。

回答者のなかには、日本赤軍を率いた重信房子氏のような“有名人”もいるが、匿名を含め多くは無名の人たちだ。全共闘で戦ったあとは、企業などの組織でも「戦士」として奮闘した人も多いのではないか。そろそろ後期高齢者になる時期、人生の「総括」という気持ちで回答した人も多いだろう。

「みんな何処へ行った 見送られることもなく」という中島みゆきの「地上の星」を引用して、全共闘の今の所在を問いかけた回答があった。私も中島みゆきの「忘れな草をもう一度」の歌詞を引いて、連帯の気持ちに代えたい。

「忘れな草もう一度ふるえてよ あの人の夢にとどけ」

著者プロフィール

高成田享

ジャーナリスト

   

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